雪に折れぬ青柳の枝 − 見舞う心

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  私の心に残っている、千利休につぎのような逸話があります。

  秀吉公家臣であり、利休七哲の中でも筆頭とされた会津の鶴ヶ城城主、蒲生氏郷(がもう うじさと)。
  その蒲生氏郷(1556年~1595年3月17日没)と千利休の逸話。

  会津鶴ヶ城城主、蒲生氏郷が病についたので、利休は見舞いに行かれた。
  千利休は茶の湯の師として親しい間柄であるから、氏郷は病間へ迎え入れて対面なさった。利休は氏郷の病んだ姿をご覧になって、

   「ご病気のご養生が、中途半端のようにお見受けします。あなたは第一にまだまだお若い身であり、それに文武の両道に秀でた御大将であり、日本でも一人か二人しかいないほどの大名であります。それを考え、これを思ってみても、いずれも世の中を誤りなく導く人としての、大切な資質ばかりです。それなのに、あなたはご療養がおろそかのように思われます。気を引き締めておすごしください」と利休はおっしゃった。

  すると氏郷は、

   「かぎりあればふかねど花はちる物を 心みじかき春の山風」
  (花は、その命のかぎりが来さえすれば、風に吹かれずとも、自分から散ってゆくものですのに、春の山風は思いやりもなく、まだ続くべき花の命を散らすことです。私の命も、山風に吹かれた花のように、この病いで散ることでありましょう)と詠じた。

  それを聞くと利休は涙を流し、なんとお覚悟の深いことをおっしゃる、とつぶやき、しばらくは物も言えずにおられた。やがて、「おっしゃるとおりではありますが」と言いながら、涙をおさえて、

   「ふるとみばつもらぬさきにはらへかし 雪にはをれぬ青柳の枝」
  (雪が降ってきたら、積らない先に払い落としなさい。あの細い青柳の枝が、雪に折れないのは、自分でそれをしているからです。あなたもご病気になったいま、ご自分で強い意志をもって、病気をなおそうとご養生におつとめなさることです)と返歌をなさった。(参考文献:利休の逸話)


  この逸話を思い起こすたびに感じることは、家族以外、病気でご入院や自宅療養をされている人にお見舞いに行かれるとき、「健康な自分」として病気の人と向き合うなら、病の人を傷つけることも多く、かえって見舞わない方がいいということです。
 これは表現が難しいのですが、病に臥せっている人の心理というのは、日々、病魔、孤独感と戦い筆舌では云い難いほど健康な人と温度差を感じているものです。

  上述のように、ここでは逸話ではありますが、利休は涙ながらに、まるで氏郷と同じ境遇の如く向き合っておられます。利休の言う、

   「雪が降ってきたら、積らない先に払い落としなさい。あの細い青柳の枝が、雪に折れないのは、自分でそれをしているからです。」

  この言葉を胸に、見舞う心も忘れず、日々、用心して過ごしていきたいものです。






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by mental-online99 | 2016-10-18 23:36 | 不安障害・パニック障害 | Comments(0)

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