精神療法 その現代の問題点

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 夕暮れの富士山。2015.1.7 撮影

 


 さて、今日は精神療法、今で云う神経症(不安神経症や対人恐怖症、強迫観念を含む) パニック障害等のカウンセリングも含めて現代の問題点を述べてみたい。本ブログは、医療関係者も多くご覧戴いているようなので、是非、当時を思い起こしながら御目通し願いたいと存じます。


 はじめに、私の恩師、鈴木知準医学博士が昭和50年代頃に記述した、精神療法の問題点をご紹介したい。

 

 『森田療法を生涯の仕事として、昭和二十六年五月静岡の地にはじめてから、二十二ヶ年を経過した。この間、一カ月以上の入院生は二、三〇〇名を越えている。はじめは、あやぶみながら森田のやり方を手本として手をつけたという程度が本当である。その間いろいろ、錯誤訂正をくりかえしながら今日にいたっているが、そのうち最も心に残り、今も尚問題としている四、五の点についてふれてみたい。』

  

 保険診療と自由診療

 

 『昭和二十二年、私が戦争から故郷の地静岡県にかえり、診療所を開いたのは昭和二十二年四月であった。そしてたしか昭和二十四、五年頃から保険医になった。二十六年森田派の精神療法をはじめた頃は、保険医であったが、保険診療は全診療者の五分の一位であった。二十八年七月、私は保険医をやめている。

 それは森田療法にうちこむようになってからであった。その頃、二十八年、森田療法の患者のうち四分の三が自由診療で四分の一が保険診療であった。


 その心的態度の差はそれ程にも思われなかったが、それは厳格に人選して入院させたということが大きな原因と思う。保険のもので途中で治療をやめたものはなかったが、ねばって作業の中に入り切る態度はすくなかったように思われる。保険診療で、自分は治療してもらう権利があるというような立場に立たれると、森田の精神療法は十分に行うことが出来ない。勿論森田のみでなく、精神分析療法でも同じであろうと思う。特に不問療法のような、症状を放置して目前の作業に入り切る点など不可能ではないだろうが、やりにくくなってくるのではないかと思う。森田療法の理論を十分理解しても、不問療法などの、どうにもならないどん底の心的態度を経験さす微妙な点が極めてやりにくくなるおそれが十分ある。


 また、私の所の入院で、経済上の問題もからめて、入院二、三カ月頃から、今まで二十数人、ほとんど入院費なしにしたことがあるが、そうすると大部分がのんびりして、作業の中に入り切る意欲が極めて減ずる。このことは注目に価する事実である。いつまでもいてよいような態度になるものが多い。土居健郎教授の理論の「あまえ」の点を考えると、この「あまえ」をどうしてうち切るかが問題になるようにも思われる。』


 

 以上、一部ではありますが、森田療法実施上の問題点として恩師が指摘しておられた。

このご指摘は森田派の精神療法のみならず、多くの精神科医療に関わる治療者がぶち当たっている壁ではなかろうか。

 恩師が鋭く指摘する、「保険診療で、自分は治療してもらう権利がある」とした立場では困難を要する。しかし、冷静に俯瞰してみると平成の現代では、精神療法だけではなく、あらゆる分野でも云えることであろう。


 ちなみに、鈴木知準医学博士は、自身が患者であった昭和初期当時を振り返っておられる。


 『昭和2年3月13日、大雪の日曜日、雪をおかして森田先生の診察をうけた。私はN大学にて精神科教授に面接をうけていたが、常に三、四分の面接であった。ところがここではおそらく四十分位、追いつめてくるような面接であった。私が遺精恐怖のことを言おうかどうしようと迷い、先生から追いつめられて返事が出来なくなってしまった。』


 『森田先生は当然のことながら、その診断は今の言葉でいえば登校拒否の意薄弱性精神病質である。厳格な森田の入院治療は無理とのことで、入院をことわられた。実際そのときは、旧制高校や大学の学生が七、八人入院していて、部屋もなかったらしい。父はどうしてもと頼み、私も是非にと頼んだ。特に奥様と予診をとって頂いた野村章恒先生にたのんだ。森田先生は全然気のりがしなかったというが、特に野村先生は、若いからなんとかなるかもしれないと森田先生に助言したという。』


 まさに、ここで返されては頼るところがない、この極めて難しい自分の症状を解決できるのは、ここでしかない、と云った局面であったように想像できる。その後鈴木知準博士は精神科医師となり、厳格な森田療法を生涯貫かれた。実際、多くの患者と云われる人たちが先生の面接を受けるも、森田療法は向かないと返される人も多かった。


 博士の云う、「あまえ」をどう打ち切るかもそうだが、神経症は親と子の共依存も多い。

したがって、「あまえ」もそうだがあらゆる脆弱性を持つに至った人たちも少なくない。しかし、一方で、インターネットやメールの普及により、精神療法と云う表現こそ大げさになり、手軽にネットカウンセリング、、と云った内容が定番になりつつある。いわゆるネットで便利、楽にと云った世間の求めるところと、精神療法の実際との温度差が大きくかい離している。


 また、最後に恩師は以下のように述べている。


 『とくに無知で来た人たちに対しては本人と数回面接し、その治療に対してあやぶみ、その性格等を考えて厳選した少数人数入院せしめた。来たものをそのまま入院せしめたら極めて多数の人たちであり、また中途退院者も多く、治療のなりたたないものが多数であったことが想像される』



 いわゆる神経症類は、実地に即さない机上論や、抽象論では歯が立たない。大切なのは、理論はもちろん事実に即した具体的な行動であります。保険診療云々はともかく、コンビニ感覚の状態ではこころの展開は難しいのが実際であろう。


  何かを極めようとした場合、簡単に手に入ったものほど脆いのは、何もこの分野だけではない。




不安障害(不安神経症), パニック障害・各種神経症の症状と心構え, メンタルヘルスONLINE
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by mental-online99 | 2015-01-08 17:05 | 不安障害・パニック障害 | Comments(0)

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